はじめに
「プロセスマイニング」という言葉を耳にすることが増えてきたものの、その具体的な内容や実際の活用方法については、十分に理解できていないという方も多いのではないでしょうか。プロセスマイニングは、企業や組織が業務プロセスを最適化するための非常に効果的な手法です。従来の業務改善手法と異なり、プロセスマイニングはデータに基づいて業務プロセスを可視化し、問題点やボトルネックを発見することができます。これにより、無駄を削減し、業務の効率化を図ることが可能となります。
実際に、世界のプロセスマイニング市場は2024年の24億6千万ドルから、2032年までに463億9千万ドルまで成長すると予測されています。これは、毎年44.3%という驚異的な成長スピードです。
データ引用:ITR「2023年度のプロセス・マイニング市場は、調達業務での採用拡大などにより前年度比46.9%増」https://www.itr.co.jp/topics/pr-20240723-1
次節では、プロセスマイニングとは何かについて説明します。
プロセスマイニングとは
業務を改善するためには、業務の可視化が必要です。しかし、実際に業務プロセスを可視化するためには、関係者へのヒアリングや帳票・データ類の確認を通じて、業務フローなどを作成する必要があり、多大な工数を要します。加えて、一度業務フローを作成しても、時が経つとともに、実際の業務が変化しせっかく作成した業務フローも古いものになってしまいます。
こうした課題を解決してくれるのがプロセスマイニングです。プロセスマイニングでは、企業内で使用されるシステム(ERPやCRMなど)から得られるデータを活用して、データに基づいてリアルタイムで業務プロセスを自動的に分析・可視化することができます。これにより、現実の業務の流れを明確に把握し、その中に潜む問題や非効率な部分を特定し、業務改善へつなげることができます。
このように、プロセスマイニングは特に業務の効率化を目指す企業にとって、今後ますます重要な手法となることが予想されます。しかし、新しい技術であり、国内での導入実績も少ないため、どこから始めてよいのか、またどのように実践すべきかが不明確な方も少なくありません。そこで本記事では、プロセスマイニングに関する理解を深めるためのおすすめ書籍を3冊紹介いたします。
これらの書籍は、プロセスマイニングの基本的な考え方から、実践的な手法に至るまで幅広くカバーしており、初心者の方にも役立つ内容です。
プロセスマイニング 理解と実践─業務プロセス改革を進化させる最終手段
著者は、KDDIにてプロセスマイニングを活用した業務改善を推進されていた近藤裕司氏、監修は一般社団法人プロセスマイニング協会(APMJ)代表理事で・上智大学 特任教授の百瀬公朗です。
本書は現場の業務改善の現状・課題から、プロセスマイニングの歴史、プロセスマイニングの概要、プロセスマイニングの導入・業務改善までを網羅的に解説しています。また、内容は筆者の経験に基づいており、実際の導入プロセスがイメージでき、非常に説得的です。
今回紹介する3冊の中で、最も初心者に対してわかりやすい内容です。
プロセスマイニング(ツール)を導入しただけで期待した成果を得られるようなことはありません。「どう活用していくか?」の組み立てが必要であり、改善するアクションとセットで初めて効果を出せる技術なのです。
本書では、国内の最初期ユーザーとして2017年からプロセスマイニングの業務適用に取り組んできた筆者が、プロセスマイニングの本質や利用のポイントについて、経験とノウハウを含めてわかりやすく解説します。
ーAmazon説明欄より引用
DXに必須 プロセスマイニング活用入門: ファクトベースの業務改善を実現する
著者はプロセスマイニングのコンサルティングに従事されている松尾 順氏です。
本書でも、プロセスマイニングの概要から歴史、分析アプローチ、導入事例などについて網羅的に言及されています。
先述した『プロセスマイニング 理解と実践─業務プロセス改革を進化させる最終手段』よりも、より詳細にプロセスマイニングツールの機能や業務改善の方法論について記載されている印象です。
本書は、日本におけるプロセスマイニングの第一人者が、プロセスマイニングツールの使い方や取り組み事例、プロセス分析の主要なアプローチを第一部で解説。さらに第二部では、プロセスマイニングを活用した業務改善はどのように取り組めばいいのか、「ビジネスプロセスマネジメント」 (BPM)という、包括的な業務改善の方法論に基づきながら具体的に指南する。
ーAmazon説明欄より引用
プロセスマイニングの衝撃 ~シーメンスやBMW、Uberは、なぜ本気で取り組むのか~
著者はカリフォルニア大学サンタバーバラ校の客員研究員であり、Siemens社幹部のラース・ラインケマイヤー氏です。
本書の特徴はプロセスマイニングプロジェクトについての解説の後に、Siemens、Uber、BMWなど11社もの事例が登場することです。
やや難しめの内容ではありますが、プロセスマイニングという新技術でここまでの事例に触れられる書籍は貴重だと思います。
イベントログデータをすべて収集し、ケースIDやアクティビティ、タイムススタンプという軸に沿って分析することで、実際に行われたすべてのビジネスプロセスを、例外処理も含めて可視化するのが、プロセスマイニング。
本書はSpringer社刊の「Process Mining in Action」の日本語翻訳版で、プロセスマイニング導入の実用的なノウハウを公開する解説書となっている。
ーAmazon説明欄より引用