はじめに
経済小説は、実際の経済や市場の動きを小説という形で描き出し、複雑な経済の世界を分かりやすく理解させてくれます。本記事では、特に海外で出版された海外小説を紹介します。
本記事で紹介する各小説は、金融危機や企業間の競争、市場動向など現実的な経済情勢に基づいているもの(ノンフィクション)が中心です。
そのため、ビジネスや金融に関心のある方にとって非常に魅力的なジャンルだと思っています。
気になる作品があれば、ぜひ一読してみることをお勧めします。
国内の小説は下記の記事にまとめています。興味がある方はご覧ください。
おすすめ書籍
世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち/文春文庫
概要
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(The Big Short)の原作小説です。著者のマイケル・ルイスはプリンストン大学で学士号を取得後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで修士号を取得しソロモンブラザーズに債権セールスマンとして勤務した経験を持ちます。下記で紹介する「マネーボール」(こちらも映画化)の著者でもあります。
あらすじ
2000年代半ば、アメリカ合衆国のの住宅価格上昇に伴い、住宅ローン債権が優れた金融商品として気脚光を浴びていた。その裏に潜む危機を見抜き、世界経済の崩壊に賭けた男たちがいた。投資銀行、格付け機関、そしてアメリカ政府の予測を裏切り、彼らはどのようにして「世紀の空売り」と称される大規模な投資を成功させ、巨額の利益を手に入れたのかを描き出す。
フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち /文春文庫
概要
「世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち」と同じく、ソロモンブラザーズ出身のマイケル・ルイスによる作品です。プログラムを用いて超高速で取引を繰り返すHFT(High Frequency Trading)業者をテーマにした作品です。
あらすじ
2008年のリーマンショック後、ウォールストリートでは規制強化により市場が健全化したと信じられていたが、実際にはその規制が逆効果となり、イカサマ市場を作り出していた。この本はその実態を暴露する。証券市場の民主化で取引所が増えると、ディーラーたちは価格が急に消える現象に悩まされる。ウォール・ストリートのブラッド・カツヤマは調査を開始し、超高速取引業者「フラッシュ・ボーイズ」が注文を先回りしていることを発見。
ライアーズ・ポーカー/早川書房
概要
先述した2作と同様に、マイケル・ルイスのデビュー作です。ウォール街の投資銀行の内実を描き出した作品です。
あらすじ
1980年代、ウォール街の投資銀行は「巨大な幼稚園」だった。ソロモンブラザーズで働いていた著者が、ウォール街の内幕を暴露した。あのソロモン・ブラザーズのグッドフレンド会長を失脚に追いやり、 ウォーレン・バフェットまで登場させた、 自由奔放で滑稽、あきれ果てるようなウォール街の投資銀行の真実の物語。
リーマン・ショック・コンフィデンシャル 追いつめられた金融エリートたち/早川書房
概要
コーネル大学を卒業後、ニューヨーク・タイムズで金融ジャーナリストとして活躍しているアンドリュー・ロス・ソーキンによる、リーマンショックをテーマにした作品です。フィナンシャル・タイムズの年間ベスト・ビジネスブックに選出されています。上下の2巻構成です。
あらすじ
みずからの利益か、世界金融システム破綻の回避か。迫り来る未曾有の危機に際して、リーマン・ブラザーズCEO、ポールソン財務長官、バーナンキFRB議長、ガイトナーNY連銀総裁、ウォーレン・バフェット、そして巨万の富を稼ぐウォール街のトップは、何を考え、何を語り、いかに行動したか。
ウォール街の物理学者/ハヤカワ文庫
概要
著者のジェイムズ・オーウェン・ウェザーオールは物理学者・数学者・哲学者であり、カリフォルニア大学アーバイン校の教授です。本作品は、金融業界に進出していく物理学者たちをテーマにした物語です。扱っているテーマは難しそうですが、非常に読みやすい作品です。
あらすじ
確率論とギャンブルを愛する男による世界初の株価予測モデルが20世紀半ばに発見された。
物理学者たちは、金融商品の値動きを予測するべく、粒子の動きに見立てたり、確率分布グラフにしたり、金融市場の攻略に切磋琢磨する。金融危機後も高度な数学・物理学を駆使して利益を生む、カオス理論、複雑系、アルゴリズムなどの知識をもつ理系〈クオンツ〉のルーツに焦点を当てたノンフィクション。投資必勝法に挑む天才たちの群像と金融史を精細に描く。
フラッシュ・クラッシュ Flash Crash たった一人で世界株式市場を暴落させた男/KADOKAWA
概要
著者のリアム・ヴォーンはブルームバーグとビジネスウィークのジャーナリストです。
あらすじ
36歳のナビンダー・シン・サラオは、両親と一緒にロンドン郊外の小さな家に住み、子ども部屋に設置した古いコンピュータを使って株の取り引きをしていた。酒もタバコもやらず、質素な生活を送るこの男が、トレーダーとしての頭角をあらわし、莫大な富を蓄え、アルゴリズムによる取引が跋扈した市場に挑む。
天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す 偶然を支配した男のギャンブルと投資の戦略/ダイヤモンド社
概要
数学者である著者のエドワード・O・ソープが、数学を駆使して必勝法を編み出し、ラスベガスとウォール街で荒稼ぎした経験をベースにした自伝です。日経新聞の本誌に書評が掲載されました。上下の2巻構成です。
あらすじ
カジノや株式市場のような不確実な世界で勝ち続ける方法はあるのか?数学者エドワード・ソープは、得意の数学理論を駆使して必勝法を見つけ、ギャンブラー兼投資家として大成功を収めた。彼は学者生活に飽き、ブラックジャックを分析し、大学のコンピューターでカードの確率を計算。カジノで勝ちすぎて毒殺されそうになった後、株式市場へ転身。オプション取引を用いたヘッジファンド運用で成功を収め、クオンツ運用の先駆者となった。
カオスの帝王―惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち/東洋経済新報社
概要
著者のスコット・パタースンは「ウォール・ストリート・ジャーナル」で20年以上のキャリアを持つ記者であり、「ザ・クオンツ」などが代表作です。本作は予測できないが市場に極端に大きな影響を与える現象:ブラックスワンに対応するファンドマネージャーをテーマにした作品です。
あらすじ
パンデミック、テロ、暴動、政治紛争、サイバー攻撃、気候変動、破壊的技術の出現など、市場を混乱に陥れる「予測できない極端な現象(ブラック・スワン)」にいち早く気づき、行動を起こした者だけが巨万の富を手に入れることができる。不確実性が増し、存亡リスクさえも高まる世界にどう適応すべきか。「カオス」を制したファンドの「帝王」たちから、その原則と思考法を学ぶ。