はじめに
経済小説・ビジネス小説のテーマは各種メーカー(自動車など)、コンサルティング、銀行、官僚、商社など非常に多岐にわたります。そうした多数の作品の中から、本記事では、製造業がテーマの経済小説を4作品紹介します。製造業に従事する方はもちろん、そうでない方にもお勧めできる作品です。
また、下記の記事では金融業界をテーマとした経済小説を紹介しています。興味がある方はぜひご覧ください。
自動車・自動車部品メーカー
トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業/小学館文庫
概要
経済記者として活動する傍ら、本書「トヨトミの野望」で作家デビューした梶山三郎による作品。シリーズ累計22万部を突破している「トヨトミ」シリーズ3部作の第1作目です。トヨタ自動車をモチーフにした「トヨトミ自動車」の内情を描いた作品です。「巨大自動車企業に極めて近い経営者は99%が事実」と言い切ったともいわれる作品です。
あらすじ
愛知県豊臣市に本社を構えるグローバル自動車メーカー・トヨトミ自動車に勤める武田剛平は、左遷されていた時期を経て社長に昇りつめた。トヨトミ自動車創業家の豊臣統一は、武田剛平を越えようと野心を抱く。創業家とサラリーマン社長の確執、アメリカでの活動や新車種開発などを描いたリアリティあふれる小説。
小説 第4次産業革命 日本の製造業を救え!/日経BP
概要
大手シンクタンク(野村総合研究所)に所属するコンサルタントである藤野直明氏らによる自動車部品メーカーをテーマにしたビジネス小説。藤野氏は「日本オペレーションズリサーチ学会フェロー、オペレーションズ・マネジメント&戦略学会理事、ロボット革命協議会インテリジェンスチーム・リーダー、早稲田大学大学院客員教授他、大学、大学院での社会人向け講義も行って」います。
あらすじ
横浜市の中堅部品メーカー、ケイテックは、大手自動車部品メーカーにカムシャフトやエンジン・ケーシングを納めているが、ホシダ技研の次期モデルのカムシャフト受注を逃す。その上、ドイツのボルツ社からの大型商談も、生産管理システムの弱さを指摘され、調達前資格審査で落選してします。二代目社長・藤堂敬介は、大学時代のラグビー仲間である河島健一に相談し、第4次産業革命の潮流に目を開かされる。藤堂は、福岡市の浦田機工の浦田理恵社長に助けを求め、ケイテックのデジタル化・サービス化による改革を進めることを決意する。
落日の轍 小説日産自動車/文春文庫
概要
多数の経済小説を著している経済小説の大家、高杉良による日産自動車をテーマにした小説です。カルロスゴーンの逮捕や、本田との統合など話題に事欠かない日産の歴史に迫った作品です。
あらすじ
かつて日産自動車で絶大な権力を誇り、「天皇」と恐れられた塩路一郎。組合員二十万人を擁する労働組合のトップとして、社長人事にまで影響を与え、経営を歪め、社内紛争を長期化させた。その一方で、豪華クルーザーで遊び、愛人を抱え、私欲を満たし続けた。なぜ彼はそのような権力を握り、自由に振る舞うことができたのか。大企業の深層に切り込む、迫真の実録小説。
精密機器メーカー
奇跡の改革/PHP文芸文庫
概要
早稲田大学卒業後、第一勧業銀行所属中に作家デビュー、「失格社員」などのベストセラーを含む多数の著書がある江上剛による作品です。本小説は、本業が急速にシュリンクしていた富士フイルムのV字回復をモデルにした物語です。
あらすじ
日本写真フイルムはデジタルカメラの台頭により、本業であるフィルムの需要が急激に消滅していく、未曾有の危機に陥っていた。この「本業消失」という非常事態に際し、立ちあがった者たちがいた――。これまでフィルムで培った技術を生かして未経験の化粧品開発に挑み、数々の困難を乗り越え、大ヒットブランドを生むまでの社員たちの苦闘を描く感動のノンフィクション小説。
電機メーカー
ヘルメースの審判/角川文庫
概要
慶應義塾大学大学院を修了後、米国企業コダック日本法人で80億円規模の物流プロジェクトを担当していた楡周平よる作品です。在職中に出版した犯罪小説『Cの福音』など多くのベストセラーを著しています。
あらすじ
世界的な電機メーカー・ニシハマの創業一族に婿入りした梶原賢太は、原発建設プロジェクトを担当していた。しかし、建設計画に遅れが生じ、ニシハマは巨額の損失を被る危機に直面する。そんな折、梶原は一大プロジェクト、使用済み核燃料の最終処分場建設を任せると言い渡す。経営陣からの厳しい圧力に屈することなく、前代未聞の事業を成功に導くことができるのか。波乱の企業ドラマが繰り広げられる。
食品メーカー
逆玉に明日はない/光文社文庫
概要
上述したヘルメースの審判と同じく、慶應義塾大学大学院を修了後、米国企業コダック日本法人で80億円規模の物流プロジェクトを担当していた楡周平よる作品です。在職中に出版した犯罪小説『Cの福音』など多くのベストセラーを著しています。
あらすじ
総合商社に勤務していた是枝明憲は、総合食品メーカー「MGF」オーナーの娘と結婚し、婿養子として創業家一族入りする。しかし、創業家の陰謀により、息子を奪われ、社内での立場を失っていき、離婚。是枝は、慰謝料として与えられた創薬ベンチャー「ミライ&キンベル」の代表として、創業家一族に一矢報いるため奔走する。