【読後メモ】戦略コンサル・FASの業務理解に役立つ「最強のM&A/A.T.カーニー」

書籍

概要

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シリーズ累計7万部を超えるA.T.カーニーによる「最強シリーズ」のM&A編。M&A全体のうち、戦略コンサルが関与することの多い事業面からの戦略立案、分析・実行にファーカスして解説している。

戦略コンサルティングファームやFASのStrategyチームにおいては、本書で重点的に解説されているBDD(ビジネスデューディリジェンス)のプロジェクトが(当然各社で差はあるが)豊富にデリバリーされており、戦略コンサルティング・FAS業界を志望する就活・転職に際しての業務理解にも参考になる一冊である。

全体はM&A戦略フェーズ、トランザクションフェーズ、トランスフォーメーションフェーズの3フェーズに分けて解説されている。

おすすめする読者

  • 事業会社のM&A担当者
  • ファイナンシャルアドバイザー
  • 戦略コンサルタント

内容

M&A戦略フェーズ(Pre M&A)

各種金融機関やM&A仲介会社から案件を紹介されてから検討を始めるという待ちの姿勢ではなく、事前に自社の企業価値を最大化する戦略を考えたうえで、その実施のために不足する能力を獲得するためのM&A戦略を策定しておくことが重要である。Pre M&Aのフェーズでは、このようなM&A戦略の策定を下記の5つのアクションに分けて解説している。

  • 「ゲームチェンジの可能性を見出す」
  • 「成長戦略と不足する能力を洗い出す」
  • 「M&A候補企業を洗い出す」
  • 「買収シミュレーションをする」
  • 「買収候補に対し、継続的にアクションを起こす」
in Deal

トランザクションの様々な検討事項の中でも、特にBDD(ビジネスデューディリジェンス)について重点的に解説されている。BDDにおいては、対象会社が将来生み出すキャッシュフローを精査することが重要になる。BDDにおいては、下記5アクションに分けて解説されている。

  • 「対象会社が戦っている領域の定義」
  • 「競争力の源泉の見極め」
  • 「戦略と業務プロセス、財務の整合状況の確認」
  • 「将来の利益・キャッシュ水準の定量化」
  • 「投資後のイニシアティブの整理」
トランスフォーメーション

投資後のバリューアップについては下記4ステップについて解説がある。

  • 「全体プランの設計」
  • 「実行体制の構築」
  • 「PMOによるコントロール」
  • 「機運の醸成」

まとめ

本書はM&Aの各フェーズにおけるビジネスサイドからの分析について、包括的にまとめられている。企業価値評価や財務デューディリジェンス、ビジネスデューディリジェンスなど各論点についてのM&A関連書籍が多数存在するが、PreからPMIまでビジネスサイドからの網羅的な記載がある本書のような書籍は、あまりないのではないだろうか。(一方で、バリュエーションやストラクチャリングなどFA業務について知りたい方にはあまりおすすめできない。)

M&AはPre M&A, in Deal, Post M&Aが有機的につながっている必要があり、どれか一つのフェーズが欠けていても思ったような買収効果が得られる可能性は低くなる。本書のような全フェーズについて一貫した視点を持つようなDealが非常に重要であろう。

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